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EOL社会見学 Vol.002

地域に開かれた環境共生型社屋 「地球のたまご」

OMソーラー

鳥のさえずりが聞こえ、揚水風車が回る、静岡県浜名湖に面した「地球のたまご」は、「OMソーラー」の社屋だ。もともと鰻の養殖地だったところを埋め立てた広さ1万坪のこの土地は、樹木1本もない荒涼とした土地だったという。そこに、1万ポットの在来種の樹木の苗を植え、池や水路を作って排水を浄化し、動植物が集まるビオトープになり、個性的な社屋を囲んでいる。
OMソーラーとは、太陽熱エネルギーを、効率よく住宅に利用したシステム。「もったいない」が今のように環境キーワードとして注目されるはるか前から、「O(おもしろい)、M(もったいない)」という発想のもと、自然エネルギーをどう生活に取り入れるかを提案している企業である。そのため、この「地球のたまご」は単に一企業の社屋という機能だけでなく、地域に開かれた自然エネルギーの実験場になっている。

社屋
集熱パネルが並ぶOMソーラーの社屋

 「地球のたまご」のひとつの目的が「浜名湖の湖岸を再生し、水源となること」。そのためのさまざまなプロジェクトが試みられている。
まずユニークなのが、排水浄化システム。浜名湖は海水と淡水が混じる豊かな汽水湖だったのだが、最近は生活排水の流入等による汚染が進み、海水の濃度も上がっているという。そのため、まずこの社屋から出た排水は、すべて敷地内できれいにしている。し尿は微生物を使ったバイオマストイレを用いて処理した後、合併浄化槽で生活排水と一緒に浄化。さらにこれらの水は、蒲(かば)や葦(ヨシ)が自生するいくつかの池と水路によって、植物の力を使ってゆっくり活性化。さらに、最終地点の大池では、揚水風車でくみ上げて、再び水路を通って水を循環させて、池にもどしている。
2005年の調査では、水質も良好で、池には近くで捕獲された魚が日々増えつつあり、それを狙ってたくさんの鳥も集まってきているそうだ。
 将来的には、浜名湖へ通じる堰を開けて、生き物達が行き来できるようにしたいとのこと。この池が浜名湖に住む生き物が通う、水源になる日もそう遠くないはずだ。

風車

水を風の力でくみ上げる揚水風車

大池.

ランドスケープのアクセントとなっている大池

 そして、もうひとつの取り組みが「どんぐりプロジェクト」。樹木がなかったこの土地に、浜名湖や周辺の都田川水系に古くからあった在来の樹木を選んで、社員自らが、挿し木やどんぐりから育てた苗を植えている。
 さらに、中庭や土手は、「布団カゴ」と呼ばれる建築資材を活用して緑化。中には池を掘った土を入れ、アゼターフと呼ばれる在来種の雑草種を表土ごと移植している。私たちが訪れた5月には、ノアザミやノイバラなど、浜名湖周辺の豊かな野の花がランドスケープを彩っていた。

ノアザミ
アゼターフのノアザミも可憐な花をつける

 「地球のたまご」は環境価値を作ることだけでなく、OMソーラーを体感できる場として、そして社員の方の働く場としても機能している。
 その建築デザインもユニークだ。分練型の建物がコリドールと呼ばれる回廊でつながり、無垢の天竜杉をふんだんに使った内部は、ドラマチックな空間を作っている。特に大池を望むコリドールは、太陽光が降り注ぎ、天然杉の構造体と床が圧倒的な存在感を示す。もちろんすべての建物でOMソーラーが設置され、冬は、軒先から外気を取り入れ、太陽の熱で床暖房し、夏は放射冷却の涼しい空気を取り込む。
 そして、特徴は開口部を北側にとっていること。これは北側に広がる浜名湖の見事な眺望を取り入れることと、直接光を入れないことで、PC画面などが見やすいなど仕事の効率をあげることにも役立っているそうだ。
 日本でもこれほど美しい風景を見ながら、自然エネルギーを使った社屋で仕事ができる環境はそうないのではないだろうか。訪問したEOLスタッフからは「サンフランシスコのベイエリアにあるオフィス」など、さまざまな形容が聞かれたが、環境を創る仕事は、まず周辺の環境価値を高める社屋からということが実感できる。

コリドール
天然杉で囲まれたコリドール

カフェテリア
カフェテリアは講習会やワークショップなど多目的に使われる

 このようなさまざまな試みが行われている「地球のたまご」は、最初の計画通り、単なる社屋という機能にとどまらず、地域に開かれた環境学習や活動の拠点となっている。最近では、地域の小学校の遠足の場所や、環境学習の場として活用されることが多くなったとのこと。
そのひとつが行政、市民、大学の先生、企業の人などが集まり、浜名湖の地域を考える「はまなこ学遊塾」。さまざまなワークショップやフィールドワークなども行い、今年は浜松市への提言も予定しているという。
アメリカでは地域の特性を踏まえ、土地の利用、水の効率的利用、建材のセレクト、エネルギー効率などを考えて建築される「グリーン・ビルディング」という考え方がサスティナブルな建築として注目されているが、「地球のたまご」はまさにその実例であり、地域の人や情報が集まる地域づくりの拠点にもなりつつあるという点が、他に類を見ない魅力を作り出しているようだ。

 


今回訪問したのは

[地球のたまご] http://www.omplan.co.jp/tamago/
[OMソーラー協会] http://omsolar.jp/
[OM計画] http://www.omplan.co.jp/

  • 見学希望の方は「地球のたまご」サイトよりお申し込みください。

写真/黒須一彦
文・構成/箕輪弥生
1989年フリーランスのマーケティングプランナーとして独立。以来、流通系プランニングを中心に食品、住宅、消費財、メーカー系プロモーション・広告企画などに参画。現在はオーガニック商品の開発、環境系の記事執筆など、マーケティングと環境の接点となる仕事に力を入れている。著書に「LOHASで行こう!」(ソニー・マガジンズ)。

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